古典中国ゼミ(渡邉 義浩)

このゼミは、中国の唐ぐらいまでの思想・歴史・文学などを勉強していきます。日本で発明された漢文訓読という古典中国語の翻訳方法を使っていきますので、中国語を必修としませんし、現代中国に興味がなくともかまいません。それでも、江戸時代までの日本は、中国、とくにわたしが「古典中国」と呼んでいる漢を中心とする古代中国を自らの国家や社会の規範としていました。

日本が好んできた中国の文化には、『論語』や唐詩もあります。前者は、わたしの専門の一つでもありますから、みなさんが望まれれば、『論語』を読んでいってもかまいません。ただ、いま考えているのは、陳寿が著した『三国志』を読んでいくことです。

日本だけではなく、中国でも「三国志」と言えば、羅貫中がまとめた『三国志演義』を起源とする歴史小説を指します。日本では、羅貫中の原作の文章を改め、李卓吾を名乗る文人が評を加えて『李卓吾先生批評三国志』を超訳した江戸時代の湖南文山の『通俗三国志』を種本とした吉川英治の歴史小説『三国志』と、それをもとに漫画を描いた横山光輝の『三国志』が、「三国志」受容の基本を定めました。コーエーなどのゲームは、横山光輝の『三国志』をもとにしています。日本の「三国志」の特徴は、曹操と諸葛亮の二大英雄の物語として「三国志」を描くことにあります。

そうした日本における「三国志」の受容史を勉強してもかまいませんが、やはりせっかく早稲田大学に入学したのですから、すべての元になっている陳寿の『三国志』を白文(句読点も送り仮名もない文)から読んでみませんか。ちょうど『全譯三國志』という現代語訳を出版している最中なので、3世紀の中国古典語が、どのように21世紀の日本語に翻訳されていくのかを見て、自分も参加していくことができます。